「商店街」と聞いて、
あなたが思い浮かべるのはどんな風景だろうか。
地域の人たちで賑わう姿か、
シャッターが降りて寂れた姿か、
リノベーションで生まれ変わった姿か。
あなたの生活する場所によって、
きっとその想像は変わってくるだろう。
今左右で流れているこの映像は、
東京都の荒川区にある
「谷中銀座商店街」の風景である。
つまりは「東京」の商店街。
中でも「下町」と呼ばれる地域の、
住宅街の中にある小規模な商店街だ。
私がそこに求めたものはただ一つ。
「人」と「暮らし」である。
「人」と「暮らし」が交差する場所として
今回注目したのが「下町の商店街」だった。
「東京」には「人」がたくさんいて、
「下町」には「暮らし」が詰まっている。
「東京」と「人」の交差点として
これ以上の条件はないだろう。
ところで現在、国内の商店街は
1万3千*箇所以上あることをご存じだろうか。
*「令和3年度商店街実態調査報告書」中小企業庁委託調査事業より参照
そのうち、東京の商店街の数は2,447*箇所。
これは全国の中でもダントツの数字である。
今、地方の商店街では、
経営者の高齢化と後継者不足などにより、
個人商店の存続が厳しくなってきている。
郊外のような車社会の中では
大型チェーン店が覇権を握るようになり、
商店街という文化自体が「暮らし」の中から
消えつつあると言えるだろう。
しかし対する東京では、
徒歩や自転車、電車などが
主な交通手段となっている。
地方出身の身としては、
下町周辺での自転車の多さが
異様に感じられた程だ。
だから私は、下町の商店街へ行けば
商店街が持つ「人」と「暮らし」の
関係を感じられると考えた。
しかし、実際に足を運んで気づいたのは
外国人観光客の多さだった。
確かに下町らしい雰囲気を残しながらも、
その中身はまるで観光名所のような、
余所者向けの商売方法に思えた。
そこで私はふと気づいた。
「暮らし」から商店街が消えただけではなく、
商店街からも「暮らし」は消えているらしいと。
実際に「小野陶苑」というお店の方にお話を伺ったが、
やはり商店街の姿は大きく変わっているそうだ。
昔は商店街で買い物が完結するほど、
「暮らし」に根付いていた存在だったらしい。
今は観光客向けの飲食店などが増えたため、
生活のための買い出しをする際は
大型スーパーに行くことが多いようだ。
語られていくその姿はもはや
「人」と「暮らし」の交差点ではなかった。
考えてみれば自然なことだ。
ボタンひとつで水が届くこの時代には、
あまりにコスパが悪すぎる文化だ。
しかし、だからといって
悪いことばかりだったわけでもない。
谷中銀座商店街では、
戦前から残る商店街としての名残なのか、
個人商店が非常に多く存在していた。
昔ながらの商店に限らず、
若い世代が店番をしているような
開業したてのカフェなどもあった。
これが何を意味するかといえば、
「小さい商店が頑張るのにほどよい環境である」
ということではないだろうか。
谷中銀座商店街は戦前から続いているため、
大手チェーンが入れるような場所が少なく、
個人商店の方が入りやすいのかもしれない。
これはある意味面白いのではなかろうか。
個人の影響が強まる現代において、
それをそのままかき集めたような形というのは。
ただひとつ懸念点があるとすれば、
しばしば工事が行われていたことだ。
そこにアパートが建とうものなら、
この先にはもう衰退しかない。
商店街全体での方向性が
その命運を決めるだろう。
ぜひこのような商店街の新しい形が
このまま実ってくれることを願っている。